眠れる森の美女@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンのみなさん、こんにちは!
怒涛の投稿について来れていますか?笑
さて、今回は先日鑑賞したマリインスキー劇場の「眠れる森の美女」を取り上げたいと思います。
ロシアバレエの父「マリウス・プティパ」の生誕200周年という記念すべき年を迎えた今年。同劇場では3月からプティパ作品をいつも以上に盛大に上演しています。
とりわけ、彼の誕生日である3月11日の前に行われた「眠れる森の美女」は通常同劇場で上演されているセルゲーエフ改定版ではなく、プティパ版(ヴィハレフ復元)が上演されたのも注目すべき点です!

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:眠れる森の美女
●鑑賞日:2018年3月9日
●主なキャスト:
・オーロラ姫:オレシア・ノヴィコワ(Olesya Novikova
・デジレ王子:ティムール・アスケロフ(Timur Askerov
・リラの精:オクサーナ・スコーリク(Oxana Skorik
・ダイヤモンドの精:ヴァレリヤ・マルティニュク(Valeria Martynyuk
・サファイアの精:石井久美子(Kumiko Ishii
・カラボス:イスロム・バイムラードフ(Islom Baimuradov
・フロリナ王女:永久メイ(May Nagahisa
・青い鳥:エフゲーニー・コノヴァロフ(Yevgeny Konovarov
●原作:シャルル・ペロー
●音楽:ピョートル・チャイコフスキー
●振付:マリウス・プティパ(セルゲイ・ヴィハレフ復元版)
※3幕目、デジレ王子のヴァリエーション(ソロ)はコンスタンチン・セルゲーエフ改訂版を使用⇒詳しくは下記の「作品(異なる点)」を参照
●同劇場初演:1890年1月3日
●あらすじ:
プロローグ:
<第一場>フロレスタン14世の宮殿では、娘のオーロラ姫の誕生を盛大に祝う洗礼の儀式が執り行われていた。リラの精を筆頭に5人の要請が姫の名付け親として招待されたが、そこに突如邪悪な妖精カラボスが現れる。自分が洗礼の儀式に招待されなかったことに怒り、「オーロラ姫の20歳の誕生日に、彼女の指に糸つむぎの紡錘が刺さり死ぬ」という呪いをかける。

しかし、リラの精は「針が刺ささったオーロラ姫は100年の眠りにつき、その後現れるであろう王子の口づけによって目を覚ます」とどうにかカラボスの呪いを弱める。
第一幕:
<第ニ場>オーロラ姫の20歳の誕生日。宮殿には4人の求婚者が集まり、姫と楽しい時を過ごしている。

そんな中、突如謎の老人が現れ、姫に花束を手渡す。姫は周りの忠告もよそに、そして花束の中に紡錘が入っていることも知らず楽しそうに踊り続け・・・そして、ついに姫の指に針が刺さり、倒れ込む。何を隠そう謎の老人はカラボスだった。
混乱に陥る宮殿にリラの精が現れ、姫は眠りについただけと諭す。姫が目覚めると同時に宮殿にいる全員が目を覚ますようにと、城全体に眠りの魔法をかける。
第二幕:
<第三場>100年経過。狩りをするデジレ王子一行。王子が一人になったのを見計らってリラの精が現れる。彼女は王子に「将来の姫を見せましょう」と誘い、オーロラ姫の幻を見せる。姫の姿に心奪われた王子は彼女の元に連れて行ってくれと懇願する。そして、リラの精と王子はオーロラ姫の眠る城へ向かう。

<第四場>
城に着いた王子は眠りについたオーロラ姫を発見する。王子の口づけによって姫は目を覚ますことができるとリラの精に諭され、口づけをする。すると、姫をはじめ、城中にいた全員が目を覚ます。そして、王子と姫は結ばれる。
第三幕:
<第五場>
オーロラ姫とデジレ王子の結婚式。様々な妖精たちやおとぎ話の主人公が招かれ、二人の結婚を祝す。

【感想】
●作品(総評):プティパの生前200回以上も上演されたとされるプティパ渾身の一作。登場人物が多く、舞台装飾から衣装まで絢爛豪華極まりないこの作品はお金がかかることでも有名で、また上演時間も驚愕の3時間50分(もはや4時間)笑

それだけのことはあって、やはり見ごたえ満載で、見終わった後の満腹感は他のどの傑作バレエ作品をも凌ぐ勢い。
特に今回の「眠れる森の美女」は通常マリインスキー劇場で上演されるセルゲーエフ改訂版と大きく異なった点も要因の一つと言えるかもしれません。

●作品(異なる点):今回の作品と通常のセルゲーエフ改訂版の違いを簡単にまとめます。
①舞台装置、衣装:ものすごいビビッドカラーでびっくり!
通常のセルゲーエフ版は淡い色合いの衣装が多いため、あまりにも違う色遣いに驚きました。もちろん過去のスケッチを忠実に再現して制作されているので、このような貴重な版を見れたことを嬉しく思います。

②振付:地味に違う!
・第一幕のオーロラ姫と求婚者4人の踊りのほんの一部分
・第二幕、第三場のオーロラ姫の城に向かう前の王子のソロがなかったような・・・
・第二幕、第四場の城での王子とカラボスの決闘シーン
・第三幕の子供たちの踊り
≪二幕目の違いの理由≫
プティパは女性パートに重きを置いていました。確かに、この作品の7割方を女性ダンサーの踊りが占めるという印象を受けました。ちなみに、白鳥の湖やジゼルも圧倒的に女性ダンサーの方が多いですね。
話は戻って、もはやデジレ王子でさえも見せ場はあまりなく、第三幕の王子のヴァリエーションや王子と姫のパ・ド・ドゥがなかったという話もあります。
セルゲーエフ版のデジレ王子のヴァリエーションが普及したこのご時世、「本日、王子のソロはございません」って訳にはいかない(笑) そんな訳で、王子はしっかりヴァリエーションを踊っていました。

●見所シーン: 
その①:プロローグのリラの精、その他5人の精の踊り。プティパが表現したかった「美しさ」のすべてが詰まっていると感じました。ちなみに、「5」という数字は「幸福」を意味するそうです。
その②:第一幕目のオーロラ姫と4人の求婚者の踊り。優雅さの中に垣間見える高度なテクニック。
その➂:第二幕目の三場と四場の間の「音楽休憩」
この間、幕は下りていて、舞台裏では場面転換をしています。そのため踊りは全くありません。しかし、幕間の休憩ではなく、ヴァイオリンソロがおよそ10分程続きます。オーロラ姫のいる城へ向かう旅路で王子が胸を膨らませている様子が目に浮かぶようなヴァイオリンの音色が劇場中に響き渡ります。そう、ここは休んでる場合ではないのです(笑)
その④:第三幕目の全部(笑) 雑に聞こえるようですが、クラシックバレエの醍醐味がすべて詰まった幕です。すべての踊りを見逃すことができない、そして、圧巻のフィナーレです!
その⑤:豪華絢爛な舞台装置。特に、今回の版は第三幕目の背景がとても特徴的でした。劇場英語版サイトに掲載されている写真を見れば一目瞭然。

●気になった点:デジレ王子の髪型
誰のせいでもないことをあらかじめ声を大にして言っておきます(笑)
ただ、通常上演されている版と異なり、第二幕の王子の髪型がいわゆるフランス貴族の髪の長い男性の髪型なのですが、どうしてもドレッドヘアーにしか見えず、しかもその上に帽子を被っていたので、どうにもこうにもパイレーツ・オブ・カリビアンの登場人物に見えて。
嘘、あれアスケロフなの?!と一瞬わからなくなるぐらい、アスケロフの要素が消された髪型でびっくりしたっていう話です(笑)

●ダンサー:みんなが思い描くオーロラ姫!
・ノヴィコワ:この役に限らず、彼女はいつも全てが完璧で、観る者をこんなにも惹きつけ、虜にする、そんな素敵なダンサーです。良い表現が見つからなくて心苦しいですが、某有名選手が言っていた「何も言えね~」とため息が出てしまう程、信じられない完成度でした。
・アスケロフ:足先までとても綺麗に踊りあげ、特にこの日は信じられないぐらいピルエットが美しく決まっていました!
・石井さん:この記念すべき公演でサファイアの精に抜擢されたこと、ちろんご本人が一番嬉しいと思いますが、筆者も物凄く嬉しいです(笑)石井さんの素敵なサファイアの精を見ることができて感激です。

●本日の注目ダンサー:永久メイさん
今日取り上げずして、いつとりあげるの!ということでついに待ちに待ったこの方の登場です!マリインスキー劇場の研修生として昨年2017年7月より活躍中の永久さん。
この日が彼女にとってフロリナ王女の初演でもありました。とても初演とは思えないほどのハマリ役でした!
実は筆者が永久さんの踊りを観るのは2回目で、初めて観たのは同劇場の「ル・カルナヴァル」という作品の蝶々の役でした。とても線の細く小柄なダンサーでチャーミングかつ美しく、そして高いテクニックを併せ持ったバレリーナですっかり見惚れてしまいました。
そんな彼女が今回フロリナ王女を踊るということもあり、万を持して劇場へ!きっと前回のようにチャーミングな彼女が見れると思ったら、良い意味で期待を裏切られました。前回観た際は、だいぶ小柄なダンサーだな、という印象を受けたのですが、今回は全く感じず、むしろ非常に存在感の大きい、かつ堂々としていて、ダンサーとして一皮も二皮も剥けた彼女の姿がそこにはありました。もちろん持ち前のチャーミングさは健在でしたが、妖艶さの方に磨きがかかったように感じました。彼女の登場シーンは今回一番盛り上がった場面の一つと言っても過言ではないぐらい、観客から大喝采が贈られていました。その中には「ブラボー」と叫ぶ小さな女の子がいたりして、現地の観客に愛されるダンサーであることを実感しました。
そして、先述の石井さんもそうですが、ロシアが誇る最高峰の劇場に二人も日本人が所属し、活躍していることが純粋に嬉しいですね。今後のお二人の活躍に目が離せません!

●筆者のつぶやき:ワガノワバレエ学校の生徒が大活躍
眠れる森の美女は子供の出番がとりわけ多く、ワガノワバレエ学校の生徒が大活躍する作品の一つです。その中でも、第一1幕、オーロラ姫が4人の求婚者からもらった花を自分の母(女王)の足元にちりばめるシーン。その花を拾い集め女王に渡すという大役をバレエ学校の少年が務めあげた訳ですが。あまりにエレガントすぎて感動!ステージの中央はオーロラ姫の踊りが続くので、ほとんど注目を浴びないであろう場面にも拘わらず、的確な所作のもと、エレガントに舞う彼の姿に、ただならぬスター性を感じました。大げさ(笑)
名前もわからない彼ですが、きっと素敵なダンサーに育っていくことでしょう。

【本日の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せます。

IMG_5573

Twitter始めました

ロシアバレエファンのみなさん、こんにちは!
突然ですが、Eliska’s Twitterを始めました!
と言っても、Twitterで何か新しい情報を配信するというよりは、このブログとEliska’s Instagramに連動させただけです(笑)
なので、それぞれのサイトで情報を更新した時に、Twitterでお知らせツイートが入るようになっています。Twitterをご利用の方は是非フォローをお願いします!

ストラヴィンスキー作品集その③@マリインスキー劇場

それでは前の記事から引き続きストラヴィンスキー作品集その③をお送りします!

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:ストラヴィンスキーのバレエ作品集(結婚、ペトルーシュカ、春の祭典)
●鑑賞日:2018年2月18日

≪第三幕:春の祭典≫
●主なキャスト:
・選ばれし乙女:ダリア・パヴレンコ(Daria Pavlenko
●音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
●振付:ヴァツラフ・ニジンスキー(ミリセント・ハドソン復元版)
●同劇場初演:2003年6月9日
●あらすじ:舞台は自然界の神(異教)を崇拝していた古代ロシア。太陽の神イアリロの怒りを鎮めるため若い娘を生贄として選び、選ばれた娘は生贄の踊りを踊り、踊り狂った末息絶え、物語は幕を閉じる。

●感想:
①作品:同作品の初演はバレエ・リュスにより1913年にパリにて上演。それまでのクラシックバレエには見られなかった内股・猫背で飛び跳ねるというニジンスキーの独創的な振付、ストラヴィンスキーの耳を劈くような不協和音と相まって、初演時にはヤジが飛び交い、多くの観客が席を立つなど大スキャンダルを生んだ。そんな大スキャンダルを巻き起こし、またその後ニジンスキーがバレエリュスを去ったことからこの作品は忘れ去られてしまったが、舞踊研究家のミリセント・ホドソンの功績により復元され、今に至る。

実のところ、今回のストラヴィンスキー作品集の中で一番楽しみにしていた作品であり、観終わった後の達成感と言ったら!
当時、様々な民謡を収集していたスタラヴィンスキーは異教徒とされていたリトアニアの民謡を基に、この作品を不協和音に変形させ仕上げた。そんな音楽と、異教徒が自然界において生き延びていく様を全身全霊で表現したニジンスキーの奇抜な振付が何とも調和していて、場面が進んでいくにつれてのめり込んで見入ってしまった。

②見所シーン:やはりクライマックスの選ばれし乙女が踊る生贄の踊りは見逃せない。生贄に選出されてから約10分ぐらいだろうか、周りを長老や獣に取り囲まれながら微動だにせず、その後、恐怖で震えながらも必死に踊り、倒れ込み息絶える。この一連の動きからは自然界の恐ろしさ、生命の儚さが存分に伝わり、まさに天才ニジンスキーにしか描けない振付の醍醐味を味わえるシーンである。

③ダンサー:ダリア・パヴレンコ
何と言ってもこの日のスターはパヴレンコでした。クライマックスの生贄の踊りまではほぼ見せ場はないのですが、この生贄の踊りが素晴らしかった!前述の通り、全く微動だにしない10分間からラスト息絶えるまでの圧巻の舞。倒れ込んだ瞬間、本当に死んでしまったのでは?と思わせるほどの完璧な舞でした。彼女にはこの日一番の拍手喝采が贈られていました。
ちなみに、余談ですが、前幕のペトルーシュカを演じたセルゲーエフとはご夫婦。

バレエリュスの初演では劇場中にヤジが飛び交ったこの作品は、100年以上の時を経て、ブラボーが飛び交う作品になりました。
これにて①~③まで続いたストラヴィンスキー作品集の鑑賞日記を終わります。

【本作の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せています。

IMG_5420

ストラヴィンスキー作品集その②@マリインスキー劇場

それでは前の記事から引き続きストラヴィンスキー作品集その②をお送りします!

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:ストラヴィンスキーのバレエ作品集(結婚、ペトルーシュカ、春の祭典)
●鑑賞日:2018年2月18日

≪第二幕:ペトルーシュカ≫
●主なキャスト:
・ペトルーシュカ:アレクサンドル・セルゲーエフ(Alexander Sergeev
・バレリーナ:ヤーナ・セリーナ(Yana Selina
・ムーア人:イスロム・バイムラードフ(Islom Baimuradov
●音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
●振付:ミハイル・フォーキン
●同劇場初演:2010年2月6日
●あらすじ:舞台はサンクトペテルブルク、街は謝肉祭の真っただ中。海軍広場に人形遣いの魔術師が現れ、3体の人形に命を吹き込むことから物語は始まる。命の宿ったその3体の人形は、バレリーナに恋心を寄せるペトルーシュカ、そんな彼をよそに着実に愛を育むバレリーナとムーア人。ペトルーシュカは激しい悲しみと嫉妬に苛まれ、ついにムーア人を襲撃、しかし、逆襲にあい、民衆の集まる広場で殺されてしまう。民衆は街で殺人事件が起きた!と大騒ぎになり、警察が出てくる始末。魔術師はペトルーシュカが単なる人形であることを警官に告げ、街には再び平静が訪れる。しかし、街が静まり返った夜、ペトルーシュカが亡霊となって現れ、魔術師への怒りを露わにする。それを見た魔術師は恐れをなしてその場を逃げ去り、閉幕。

●感想:
①作品:同作品の初演はバレエ・リュスにより1911年にパリにて上演され、一大センセーショナルを巻き起こす。ロシアの愉快な謝肉祭の話かと思ったら大間違い。人形を題材にしながらも、恋・嫉妬・憎しみ・悲しみ・怒り等の人間的感情を人形らしいぎこちない動きの中で存分に表現し、また、ストラヴィンスキーの音楽が各場面の世界観を更に広げる。最終的に「悲しい人形のお話でした」で終わらせるのではなく、人形にだって魂があり、亡霊となったペトルーシュカを登場させることによって魂の叫びを体現し、観客へメッセージ性を残してエンディングを迎えるという、20世紀初頭において斬新かつ画期的な作品であったと言える。

もちろん、民衆たちの踊りや街の活気からロシアという国の謝肉祭の楽し気な雰囲気は存分に伝わり、バレエリュスが大事にしていたロシア色を全面に出した作品でもある。

②見所シーン:見所は各三体の人形の特性を生かした振付。何だか自身がなく頼りない、でもどこか憎めないペトルーシュカ。完全に人形的ぎこちない動き、ただそれが少し冷淡さを表しているバレリーナ、チャラチャラしていそうだが男らしく頼りがいがあるムーア人。特にムーア人の部屋の場面で、ブレイクダンス的な要素を含んだムーア人のダイナミックな踊りはムーア人の身体能力の高さ=男らしさの象徴を表しているようであった。
そして、何度観ても悲しくなりますが・・・。何といってもクライマックスの亡霊となって現れたペトルーシュカの悲しみを含んだ憎悪感を全身全霊でくみ取ってあげましょう(笑)
なお、当時バレエ・リュスで活躍していた芸術家の一人にアレクサンドル・ベヌアという画家がいますが、本作品の舞台装置・衣装はベヌアによって手掛けられています。彼の描いた世界観も存分に目に焼き付けたいものです。

③ダンサー:アレクサンドル・セルゲーエフ
この日の作品の完成度に大きく貢献したダンサーとしてセルゲーエフを見過ごすことはできません!個人的にマリインスキーのペトルーシュカを観るのは今回で2回目でしたが、より大きな満足度が得られたのは今回の作品は彼の功績によるものだと声を大にして言いたい!(笑)
セルゲーエフのペトルーシュカはまさにイメージしていたペトルーシュカ像そのものでした。彼の踊りからはペトルーシュカの頼りなさ、不甲斐なさ、心の弱さ、葛藤、苦しみ、悲しみ、すべてが痛いほど伝わり、心の底からペトルーシュカが置かれた境遇に同情してしまいました。そこまで作品の世界に引き込ませてくれたセルゲーエフに感謝したい(笑)、それぐらい彼のペトルーシュカは素晴らしかったです。

④余談:ムーア人の踊りについて
上記にも記載した通りムーア人の振付はかなりアクロバティックな動きが多く、そう言ったセンスがダンサーには求められます。そう言った点を鑑みると、前回観た際にムーア人を踊っていたユーリー・スメカロフ(Yuri Smekalov)は抜群のセンスの持ち主であったことを実感させられました。彼の絶妙なアクロバティックなバレエ&ドラマチックな表現はさすがエイフマン出身なだけあるな~と思いました。エイフマンとは奇才ボリス・エイフマン率いるエイフマンバレエ団のことで、スメカロフは元々ここ出身です。その後、マリインスキーに入団し、現在はセカンドソリスト兼振付家として活躍しています。彼が振付したものはもはや紹介できない程の量で、その他にもフィギュアスケートの振付をするなど、多方面で活躍しています。
※注:だいぶ熱く語っていますが、今回、スメカロフは出演していません(笑)

それでは、その③の投稿についてはしばしお待ちください!

【本作の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せています。

IMG_5407

ストラヴィンスキー作品集その①@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンのみなさん、こんにちは!
本日は少し前に鑑賞したマリインスキー劇場の「ストラヴィンスキーのバレエ3作品」を取り上げたいと思います。
この3作品は同日に上映されたものですが、いつものごとく長文化しそうなので、その①~③という形で分けて投稿したいと思います!

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:ストラヴィンスキーのバレエ作品集(結婚、ペトルーシュカ、春の祭典)
●鑑賞日:2018年2月18日

≪第一幕:結婚≫
●主なキャスト:
・花嫁:アレクサンドラ・イオシフィディ(Alexandra Iosifidi
・花婿:ヴィタリー・アメリシコ(Vitaly Amelishko
●音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
●振付:ブロニスラワ・ニジンスカヤ
●同劇場初演:2003年6月9日
●あらすじ:花嫁・花婿の祝福、花嫁の生家からの出立、結婚の宴というロシアの農家での一連の結婚の儀式を題材にした作品。
●感想:
①作品:同作品の初演はバレエ・リュスにより1923年にパリにて上演。4台のピアノソロ、打楽器ソロ、独唱、合唱等から繰り出されるロシア民謡的な音楽表現によってロシアの婚礼儀式を表現した作品。この作品の焦点は主役の二人ではなく、ロシアの農家における「婚礼」を描くこと。そのため、振り付けも主役二人を前面に出すというよりは、ロシアの民族舞踊を彷彿とさせるコールドダンサーの踊りなど、民族色が目立った。結婚といいながらもあくまでも農家での婚礼を描いたものなので衣装に派手さはなく、登場人物も終始無表情のまま婚礼というしきたりを淡々とこなす姿が当時の社会事情を反映しているようで、何ともものかなしさを誘った。

②見所シーン:ニジンスカヤの独創的な振付センスが光った。例えば、花嫁を祝う場面で、結婚式の準備として髪を三つ編みに編む様子を女性コールドダンサー(友人役)を交えて頭を積み重ねる独特な表現を盛り込んだり、最後の結婚の宴でのコサックダンスをも盛り込んだ躍動感ある民族舞踊的な振付は見ていて爽快だった。

➂気になった点:ストラヴィンスキーお得意の難解なテンポ、民族舞踊の独特なリズム感と高度な足の動き等がふんだんに盛り込まれている作品ゆえに、どうしてもズレてしまうダンサーが見受けられた、何とも残念・・・。ただ、それだけ難易度が高い作品でもあることを実感。

④注目ダンサー:イリヤ・ジヴォイ(Ilya Zhivoi
本作品ではソリストという役でコールドダンサーの前に立ち、爽快な踊りを披露し非常に印象に残りました。特に最後の結婚の宴の場面での難易度の高い民族舞踊を巧みに踊りこなす技術は圧巻でした。
彼は同劇場ではコリフェイとして所属していますが、振付家としても活躍しており、彼の最新の作品としては「四季(The Four Seasons)」で、同劇場でも頻繁に上演されています。筆者も一度観劇しましたが、ヴィヴァルディの四季を基にしたとても美しいバレエ作品です。そして、何と!この作品でジヴォイは今年のゴールデンマスク賞の振付家部門にもノミネートされています!
思えば、筆者が彼の踊りを初めて目にしたのは2008年のワガノワバレエ学校日本公演の時でした。その時彼はラ・シルフィードでジェームズ役を踊っていて、快活でチャーミングなダンサーという印象を受けました。そんな少年がこんな立派なダンサー、そして振付家になったことをなぜか親のような目線で「良かったね」と思ってしまう筆者なのでした(笑)

それでは、その②・③の投稿についてはしばしお待ちください!

【本作の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せています。

IMG_5398