ラ・シルフィード@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンのみなさん、こんにちは!
前回の投稿の宣言通り、遡って鑑賞日記を更新します!
本日は、今年6月にセカンドソリストに昇格した我らが永久メイさんが主役デビューを果たした「ラ・シルフィード」について取り上げたいと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、彼女の初主役デビューは今回が初めてではなく、すでに今年の4月(当時まだ研修生)にくるみ割り人形で果たしています。詳しくは以前の記事(くるみ割り人形)をご参照ください。この時は初主演だったこともあり、なぜか筆者が興奮し暑苦しい日記になりましたが、今回は何せ2回目ですからね、こちらも余裕が出てきましたよ(笑)
前置きはこの辺にしてなるべく冷静なテイストでお送りしたいと思います!

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:ラ・シルフィード
●鑑賞日:2018年10月7日
●主なキャスト:
・シルフィード:永久メイ(May Nagahisa
・ジェイムズ:フィリップ・スチョーピン(Philip stepin
・エフィー:エカテリーナ・イワンニコワ(Yekaterina Ivannikova
・マッジ:イスロム・バイムラードフ(Islom Baimuradov
・グエン:ユーリー・スメカロフ(Yuri Smekalov
●音楽:H.v.レーヴェンショルド
●振付:A.ブルノンヴィル(改訂:E-M.v. ローゼン)
●同劇場初演:1981年12月1日
●あらすじ:
第一幕:
舞台はスコットランドの農村。婚約者エフィとの結婚式を控えた青年ジェイムズの前に森の妖精シルフィードが現れ、ジェイムズはすっかり彼女の虜になってしまう。しかし、シルフィードは一瞬にして姿を消してしまう。
エフィへの気持ちを未だ諦めきれないグエンをよそに、親戚や友人たちがジェイムズの家に祝福に訪れ、愉快に踊り始める。そんな中、占い師マッジが登場し「エフィが結婚するのはグエンだ」と告げ、それを聞いたジェイムズは怒り、マッジを追い出す。
結婚式当日、再びジェイムズの前にシルフィードが現れる。彼女への気持ちを抑えきれなくなったジェイムズは彼女を追って結婚式から逃げ出す。
第二幕:
彼女を追って妖精の森に辿り着いたジェイムズ。しかし、妖精であるシルフィードには触れることができない。そんなジェイムズの想いを逆手に取ったマッジが「このショールをかけるとシルフィードを自分のものにできる」とジェイムズを騙し、彼に呪いのショールを渡す。
騙されたとも気づかずに、ジェイムズはそのショールをシルフィードのかけてしまい、彼女の背中の羽は落ち・・・息絶えるシルフィード。
そこへエフィとグエンの結婚式の列が通り過ぎる。すべてを失ったことを悟りジェイムズはその場に倒れこむ。

【感想】
●作品:
「ジゼル」と並び「バレエ・ブラン(白のバレエ)」に分類され、何と言ってもこの白のバレエの世界が最大限に発揮される二幕目がこの作品の魅力の一つでしょう。衣装のロマンチックチュチュの揺れ動く様をも計算しつくしたシルフィードと彼女を取り巻く妖精たちの舞は美しく、そして神秘的な世界を描いています。
そして、一幕目のスコットランドの庶民の生活を描いた本作は、王族・勇者等が登場するバレエ作品とは違ったどこかアットホームで温かみのある現実的な世界を連想させます。そのため、より一層シルフィードという妖精の存在に幻想実が増します。
が、しかし、実のところ、筆者はこの作品があまり好きではありませんでした(過去形)。なぜかと言うと、婚約者がいるにも関わらず誘惑するシルフィード、そしてその誘惑にいとも簡単にはまるジェイムズ。挙句、なかなか自分の手に入らないのでショールをかけて自分のものにしようとする。そうこうしている内にシルフィードが死んでしまう。身勝手にも程があるぞジェイムズ!と毎回この作品を観るたびに苛立ちを抑えきれずにいました。それなら観なきゃいいのにという突込みはご遠慮願います(笑)

しかし、今回の永久さん&スチョーピンペアを観て、完全に今までの解釈が間違っていた!ということに気づきました。永久さんの演じるシルフィードは何の下心もなく、自然に滲み出る魅力を放っていて、これは確かにいくら婚約者がいるからと言ってもジェイムズが恋に落ちるのはしょうがないと納得しました。そして、そんな彼女への切実な想いを見事に演じるスチョーピン。これはもう、ショールかけるしかないよね、とまたも納得。もはや物語の世界と現実がごっちゃになるぐらい非常に自然すぎるシルフィードとジェイムズの恋模様を演じた素晴らしい二人のダンサーのお陰で、今更ながらですが、この作品が持つ本質をやっと理解できました!笑

●ダンサー:これぞまさにシルフィード!
・永久さん:
前述の通り、これぞまさに本来のシルフィードだ!と言っても過言ではない程、前回の「くるみ割り人形」のマーシャと同様、彼女のはまり役の一つになるのではないかと感じました。冒頭の登場シーン、居眠りをするジェイムズの周りを楽しそうに舞う姿。あまりにも自然な可愛さと美しさを放ち、寝ているジェイムズよりも恐らく観客が先に恋に落ちたのではないかとさえ感じました。とりあえず、筆者はジェイムズより先に恋に落ちましたよ(笑)
魅惑的な一幕目のシルフィード、妖精の森で幻想的な雰囲気を放ちながら踊る二幕目、呪いのショールをかけられ息絶える最期。すべてを見事に演じ切り、特に二幕目はほぼ出ずっぱりの状態で多くのソロパートをこなす。繊細かつ難解な足の動きなど様々な要所を彼女の最大の武器である安定したテクニックで踊りこなす。そんな姿を目の当たりにし、前回の愛くるしいマーシャとはまた違った彼女のダンサーとしての魅力がふんだんに発揮された公演でした。
永久さんは雑誌のインタビュー等で「ジゼル」を踊ってみたいとおっしゃっているのを読んだことがありますが、今回のシルフィードはジゼルに大きく繋がる作品だったのではないでしょうか。
余談ですが、筆者はジゼルが一番好きな作品です。近い将来、永久さんのジゼルが観れることを切に願っています!

・スチョーピン:マリインスキー劇場が誇るベスト・オブ・ジェイムズの一人。ジェイムズは完全なる彼のはまり役です。理由は言わずもがな、彼はジェイムズです、完全に!笑
見た目だけの事を言っているのではありません。彼の演じるジェイムズはシルフィードへの想いが非常に一途。一途すぎるが故の暴走でシルフィードは死んでしまう訳ですが、嘆き苦しみ、悲しむ姿に見ている全観客が同情してしまう。全くもってジェイムズへの恨みなんて感じない、そんな純粋なジェイムズを見事に演じる、それがスチョーピンです!そして、コンクールなどでもお馴染みのジェイムズのヴァリエーションは、こちらも安定したテクニックが武器の彼ならでは踊りで観客を魅了しました。
そして、スチョーピンと言えば、忘れてはいけないのがパートナーシップ。彼はパートナーシップに非常に重きをおくダンサーの一人です。バレエダンサーなら当たり前の話では?と思う方も多いと思いますが、彼のモットーであるパートナーシップの大切さは、時に相手のダンサーが変わろうとも手に取るように感じることができる。これは並大抵のことではないと筆者はスチョーピンがペアを組んで踊っている際、毎回感じます。そんなスチョーピンだからこそ、永久さんの魅力がより一層引き出され、作品の魅力・重みが増したのではないでしょうか。

●本日の注目ダンサー:ユーリー・スメカロフ
本来、ここで取り上げるべきダンサーではないと思う、それぐらい名実ともにマリインスキーを代表するダンサーの一人です。
彼に関しては以前の記事(ストラヴィンスキー作品集②の余談)でも取り上げていますが、元々はエイフマンバレエ出身でその後マリインスキーに移籍し、現在はセカンドソリスト兼振付家として活躍しています。直近の作品だと「パキータ」の全幕版を復元した一人で、同演目は現地で頻繁に上演されています。12月の日本公演でも三幕目の「グラン・パ」のみではありますが演目に入っています。
さて、本題に戻りますが、この日のグエン役は元々違うダンサーの予定でしたが、当日会場でスメカロフに変更するとのアナウンスが流れました。その瞬間、元々配役されていたダンサーには申し訳ないながらも、心の中で小さくガッツポーズをしました(笑)
彼の魅力は何か、一言で言うならば、「高い演技力とそれを最大限に表現する高い身体能力」ではないでしょうか。実はグエン役はそこまで難しいパートがあるわけではないですが、とにかくこの日は彼の演技力が光りました。ジェイムズがシルフィードと逢引する様子を見た!とエフィーや友人達に必死に伝える演技を始め、舞台端での細かな寸劇など、スメカロフワールド炸裂でした。そんなスメカロフに感化されたのか周りのダンサーの演技もより一層重厚さを増し、特に一幕目はまるで演劇を観ているかのようでした。
これ以上書くと長くなるので、筆者のスメカロフ論は本日ここまでに留めます(笑)

【筆者のつぶやき】ありがとう!
永久さんのシルフィードデビューに現地で立ち会えたことに感動、そして筆者のラ・シルフィード観を大きく修正してくださった永久さん・スチョーピンペアに深く感謝します。

【本日の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せます。

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