くるみ割り人形(大晦日)@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンのみなさん、明けましておめでとうございます!
本年も変わらずマイペースに鑑賞ブログを投稿していきたいと思います。お付き合いの程どうぞよろしくお願い致します。
さて、ロシアは只今くるみ割り人形シーズンの真っ只中!ということで、Eliska’s Instagramをご覧いただいている方はお気づきかと思いますが、筆者は年末に怒涛のくるみラッシュを繰り広げていました。
そして、2018年を締めくくる大晦日はマリインスキー劇場で鑑賞した訳ですが・・・。
大晦日のくるみ割り人形には特別な意味があり、どの劇場もその年の顔である看板ダンサーをキャスティングします。ご存知の方も多いと思いますが、今回はなんと我らが永久メイさん、そしてマリインスキーが誇るプリンシパルダンサーのシクリャローフが配役されるという何とも嬉しい大晦日に!!
前置きはこの辺にして、さっそく大晦日のくるみ割り人形を取り上げたいと思います。

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:くるみ割り人形
●鑑賞日:2018年12月31日
●主なキャスト:
・マーシャ:永久メイ(May Nagahisa
・王子:ウラジーミル・シクリャローフ(Vladimir shklyarov

※その他、詳しい作品情報やあらすじは以前の記事(くるみ割り人形@マリインスキー劇場)をご覧ください。こちらは永久さんのくるみ割り人形デビューの際の記事になります。

【感想】
●作品:
マリインスキー劇場で上演されているワイノーネン版のくるみ割り人形は、登場人物の子供達だけでなく大人達もクリスマスに浮足立っているようなワクワクした雰囲気が存分に味わえるまさに大堂のくるみ割り人形!と言えるのではないでしょうか。
筆者は年末にボリショイ劇場(グリゴローヴィチ版)とスタニスラフスキー&ネミローヴィチ=ダンチェンコ記念モスクワ音楽劇場(ワイノーネン版、ただし1幕目のマーシャと2幕目のあし笛の踊りはバレエ学校の生徒が踊ります)を観ましたが、どの版も素晴らしく、どれが一番!とはとても言い難いのですが・・・決める必要もないですが(笑)
ただ、唯一譲れないシーンがこのマリインスキー劇場の版にあります!それは2幕目にてマーシャが雪の精を追いかけてステップを真似するシーン。マーシャのあどけなさが垣間見えるとても愛らしいシーンで筆者はここがとても大好きです。
どこ?とお分かりいただけない方のために。なんと!今年1月にワガノワバレエアカデミーの来日公演があり、この版のくるみ割り人形を上演します。ぜひご興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか?詳しくはこちらのサイトをご覧ください。

●ダンサー:これぞ永久メイ!
・永久さん:筆者は永久さんのマーシャデビューを運よく鑑賞することができ、興奮冷めやらぬ記事を書きましたが、今回、彼女のマーシャを観て確信しました!
「この作品は彼女のためにある!」と。
相変わらず大げさな書き方をする筆者ですが(笑) 初演のマーシャの時と変わらず、心の底からバレエが好きで、この作品が好きで、マーシャが好きで、そんな様々な好きが彼女の踊りから、全身からみなぎっていました。もちろん、初演の時のマーシャよりもダンサーとして一皮も二皮もむけた凛々しい姿がそこにはありましたが、彼女の根底の「バレエが大好き」というゆるぎない気持ちが前面に表れていた、そんな公演でした。
昨年はセカンドソリストとして正式にマリインスキー劇場の仲間入りをし、様々な作品のソリストを務め、アジアツアーやその他海外ツアーに参加する等、永久さんにとって怒涛の一年だったと思います。環境が劇的に変わって大変であろう中、大晦日のステージで緊張一つ感じさせない彼女のマーシャは眩しいほどの輝きを放っていました。
そして、年明けの1月2日にもシクリャローフと共に再びくるみ割り人形にキャスティングされています。2019年も永久さんにとって素敵な一年になることをお祈りしています!

・シクリャローフ:近頃、永久さんとペアを組むことが多くなったシクリャローフ。一方で、シクリャローフの妻シリンキナ(Maria Shirinkina)は永久さんと前回のくるみ割り人形でペアを組んでいたカイシェタ(Victor Caixeta)とペアを組むことが多く、劇場内で若手の育成を見据えた流れが構築されつつあるように感じます。
さて、シクリャローフの話に戻りますが、この日も彼の温かいサポートが光りました。永久さんの全身からみなぎる感情を受け止め、見守るかのような優しい表情のシクリャローフ。これぞさすがベテラン・シクリャローフという感じでしょう。二人の間には素敵なパートナーシップが築かれていて、観ているこちらもとても嬉しく、微笑ましい気持ちになりました。そして、安定の王子のヴァリエーション。2幕目の登場から3幕目のおとぎの国までがあっという間過ぎて、「え!もう終わってしまうの?!もう王子消えてしまうの!」と名残惜しい気持ちになりました。

安齋さん前回の記事(注目ダンサー部分)でも少し取り上げましたが、今シーズンからマリインスキー劇場に入団した3人目の日本人ダンサーです。この日は1幕目にお嬢さん(お客さん)、2幕目で雪の精、3幕目に花のワルツという大忙しな配役で出演していました。どの役もとても素敵で彼女の美しさが際立っていました。特に花のワルツはメインの8人のダンサーの内の1人として配役されていました。安齋さんは入団早々、白鳥の湖の大きな四羽の白鳥に配役される他、たくさんの作品やソロをこなし、怒涛の一年を駆け抜けていました。
2019年も素晴らしい年になることを皆さんでお祈りしましょう!

●本日の注目ダンサー:リラ・フスラモワ(Lira Khuslamova
あまりにもベテランダンサーなので、ここで取り上げるのは少々気が引けるのですが、この日は特に彼女に目が奪われたので、やはり取り上げます!
フスラモワはコール・ドとして長らく同劇場で様々なレパートリーに出演しているダンサーですが、この日は1幕目のシュタールバウム家でのパーティーで踊る老夫婦のおばあさん役を演じていました。実は筆者、この老夫婦のダンスシーンがとても好きで、いつも楽しみにしている訳なのですが、彼女のおばあさんがあまりにも完璧なおばあさんで釘付けになりました。おばあさんのような小刻みな震えと若干の前のめり感、足元のおぼつかない感じ、それでいて美しく踊るおばあさん。「おばあさん」というワードを書きすぎですが(笑)
おじいさんが途中で心臓発作で倒れそうになり、そして舞台をはけていくまで登場時間はものの5分もないかもしれませんが、強烈なインパクトを残して去っていきました。見るものを惹きつけるというのはまさにこういうことなのだと彼女のおばあさん役から再確認することができました!

●筆者のつぶやき:一瞬の夢の世界
3時間弱あるマリインスキー劇場のくるみ割り人形。この日は特別短く感じ、3秒ぐらいで終わってしまったかのようなあっという間の観劇でした。非常に名残惜しく、ただ、これが本来のこの作品のあるべき姿なのかなとも思います。つまり、この作品はクリスマス・イブの夜の一人の女の子の夢の世界での楽しい時間を描いた作品であり、楽しい時間はあっという間ということを意味する訳です。そんな作品の世界観の偉大さとその作品を表現する主役の二人を始めとした全ダンサーの想いが詰まった素敵なくるみ割り人形で2018年を締めくくることができ、とても贅沢な大晦日になりました。

【本日の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せます。

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ジゼル@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンのみなさん、こんにちは!
現在、日本はマリインスキー来日公演の真っ只中で盛り上がっている最中だと思いますが、留守を守る本場マリインスキー劇場の盛り上がり具合も負けていませんよ!
という訳で本日はつい先ほど鑑賞したばかりのジゼルを取り上げたいと思います。

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:ジゼル
●鑑賞日:2018年12月5日
●主なキャスト:
・ジゼル:オレシア・ノヴィコワ(Olesya Novikova
・アルブレヒト:アレクセイ・ティモフェエフ(Alexei Timofeyev
・ヒラリオン:ユーリー・スメカロフ(Yuri Smekalov
・ミルタ:タチアナ・トカチェンコ(Tatiana Tkachenko
・ペザント:ヴラダ・ボロドゥーリナ(Vlada Borodulina)、ヤロスラフ・プシコフ(Yaroslav Pushkov)
●音楽:A.アダン
●振付:J.コラーリ、J.ペロー、M.プティパ
●同劇場初演:1942年12月18日
●あらすじ:
第一幕:
アルブレヒトは伯爵である身分を隠し、村娘ジゼルと恋に落ちる。一方、ジゼルに想いを寄せる森番ヒラリオンは懸命にアルブレヒトが村の青年でないことを説明するがジゼルは聞く耳を持たない。一人取り残されたヒラリオンはアルブレヒトが貴族である証の剣を小屋で見つける。
程なくして、村にはクーランド公爵とアルブレヒトの婚約者であり、公爵の娘であるバチルドを引き連れた貴族たちが狩りの道中に休憩するため訪れる。愛らしいジゼルを気に入ったバチルドは彼女に自分の首飾りをプレゼントする。公爵とバチルドはジゼルの家で休憩することにし、出発する際はジゼルの家の壁にかけた角笛で合図するように家来に命ずる。
村では収穫を祝う村人たちが楽しそうに踊り、ジゼルとアルブレヒトも共に楽しい時を過ごす。そこへヒラリオンが現れ、角笛を吹き貴族たちとアルブレヒトを鉢合わせにする。そして、アルブレヒトは身分を隠してジゼルに近寄り、実は婚約者までいることを暴く。完全に気が動転したジゼルは元々の持病と相まって錯乱の中息絶える。
第二幕:
ジゼルの墓に訪れるヒラリオン。婚礼前に亡くなった娘たちの霊ウィリに取り囲まれる。彼女たちは夜更けに墓に近づく男たちを息絶えるまで踊らせるのである。
ウィリの女王ミルタはジゼルも仲間に入れるため墓から彼女の霊を呼び起こす。
そこへアルブレヒトがジゼルを弔いに墓に訪れる。後悔の念に苛まれるアルブレヒトの姿に偽りのない自分への愛を感じたジゼルはウィリたちの目につかないようにアルブレヒトを森の奥へかくまう。
一方、ウィリたちに見つかったヒラリオンは踊らされ続け、最後は力尽き、ウィリたちに湖へ投げ落とされる。ウィリに見つかったアルブレヒトにも同じ運命が待っていた。しかし、ジゼルはミルタに許しを請い、二人はひたすら踊り続け、ついに夜が明ける。夜明けを告げる鐘の音と共にウィリたちは姿を消し、朝の光を浴びてジゼルも姿を消し、アルブレヒトに永遠の別れを告げる。

【感想】
●作品:
前回の記事でも取り上げた「ラ・シルフィード」と共に主人公の「死」がテーマとなっている作品です。「ラ・シルフィード」と「ジゼル」の大きな違いは、前者はジェイムズに邪険にされたマッジの恨みとその陰謀にまんまとはまってしまったジェイムズの愚かさによりシルフィードが命を落とすという救いようのない悲劇作品。一方で、後者の「ジゼル」は、一幕目でアルブレヒトに裏切られ命を落とすものの、二幕目で彼の一途な想いに心打たれ、そんな彼を許し、そしてアルブレヒトをウィリたちから助けるという永遠の愛をテーマに掲げています。すでにジゼルは死んでしまっているので、もう二度とアルブレヒトと一緒になることはできませんが、「真実の愛による死」だったという点では前者のような誰かさんの愚かさによって生じた完全なる悲劇とは一線を画すと考えます。それでもやはりジゼルはいつ観ても悲し過ぎますね・・・。
そして、前回の記事にも書きましたが、「ラ・シルフィード」と並び「バレエ・ブラン(白のバレエ)」に分類されるこの作品、特に二幕目のコールドバレエの舞は圧巻です。一幕目の村人たちの楽し気な踊りとのコントラストも見どころの一つです。
ところで、コールドと言えば、マリインスキーバレエ団来日公演でコールドの度肝を抜く質の高さに驚愕しているツイートを多々見かけました。皆さんもお気づきの通り、何といってもマリインスキー最大の武器はこのコールドバレエと言っても過言ではないでしょう!一寸たりとも狂わぬマリインスキーのコールドを堪能できる作品がこの「ジゼル」だということです。今回の来日公演では残念ながらジゼルは入っていませんが、「ショピニアーナ」(終わってしましましたが)や「白鳥の湖」などで存分に感じられるのではないでしょうか。

話を再びジゼルに戻しますが、この作品は元々フランスで誕生した「ロマンティック・バレエ」というジャンルに分類される作品です。振り付けは今のものとは異なり、ロマンティック・バレエというやや単調な作品に飽き始めてきたフランス聴衆の声と相まって19世紀中頃、本国での上演が途絶えました。そんなジゼルを消滅の危機から救ったのが皆さんお馴染みのマリウス・プティパです。数回の改定を経て「ジゼル」は本国聴衆をも仰天させるような形に生まれ変わり、今なお多くのバレエ団で上演される傑作バレエの一つとなっています。

●ダンサー:ミス・ジゼル
・ノヴィコワ:彼女のジゼルを見るのは今回で二回目ですが、初めて見た時と同様、今回も感動仕切りでした。全世界のバレリーナの中で彼女ほどジゼルそのものであるダンサーを筆者は観たことがありません。と言っても全世界のバレリーナを見たわけではありませんが(笑)
大げさに聞こえるかもしれませんが、それぐらい凄い。もはやハマリ役とかそんな単純な表現では言い表せないぐらい、彼女にはジゼルのすべてが詰まっています。確たるものは彼女の役の解釈力、そしてそれを表現できるだけの熟練されたテクニック。例えば、一幕目でアルブレヒトと踊っている最中、ジゼルの心臓の弱さを匂わせる場面がいくつかありますが、多くのダンサーがその後再び元気に踊り出します。一方、ノヴィコワの場合、確かに元気に踊り出すのですが、どことなく病弱さを残しながら終始踊っている訳です。出来そうでなかなか出来ないニュアンスの出し方だと思います。また、アルブレヒトに婚約者がいることがばれるシーン。通常は割と強く攻めるような感じでアルブレヒトに駆け寄り真意を迫る。ノヴィコワの場合、そこまで強く言い寄らず、一見控えめに見えます。しかし、心優しいジゼルはどこかでアルブレヒトを信じたいという想いとあまりのショックに傷心気味なのとが相まって、強く攻められないという絶妙なとらえ方をしている訳です。その後のジゼルが錯乱して死す場面も同情の域を超える程の可哀そうな姿に村人その1になった気分で観客を引き込みます。
本来ジゼルとはこうあるべきだというノヴィコワの強い想いが彼女のジゼルから感じられました。
今回の日本公演のメンバーには入っていなくて残念ですが、ぜひ機会がありましたら一生に一度は観ておくべきジゼルではないかと思います!
・ティモフェエフ:ごめんなさん、彼はどうしてもペザントをやっていた頃の印象が強すぎて、村人から伯爵って身分が変わりすぎて・・・。ティモフェエフに罪はない、筆者の硬い頭の問題です(笑) 二幕目のヴァリエーションなどとてもしっかり踊っていましたが、死ぬまで踊らされる=踊り疲れている(今にも死にそう)という感じがあまり見受けられず、きれいに踊るのは良いことですが、ちょっと元気すぎたかな・・・若さゆえかな(笑)

●本日の注目ダンサー:ダリア・イオノヴァ(Daria Ionova)、アナスタシア・ヌイキナ(Anastasia Nuikina
現在、日本公演で大活躍中のマリア・ホーレワ(Maria Khoreva)と同様、今年ワガノワバレエアカデミーを卒業したばかりの期待の新星です。今回は二幕目のドゥ・ウィリに配役され、ヌイキナはこの日がデビューでした。しなやかかつ美しく、どこか余裕さえも感じる二人の舞に酔いしれました。そして、この世代には他にも恐ろしく素晴らしいダンサーがたくさんいます。この日は配役されていませんが、マリア・ブラーノワ(Maria Bulanova)がすでにミルタ役でデビューを果たしています。彼女に至ってはすでに貫禄さえ感じます。そして、同じく今年ワガノワから入団した安齋織音さんも別の日ではありますが、ドゥ・ウィリのズルマ役でデビューを果たしています。彼女は驚異的なスタイルの良さが魅力の一つで、日本人にも関わらず、しかも長身が多いマリインスキーで「白鳥の湖」で大きな四羽の白鳥に配役されるという快挙を成し遂げました。その他にもたくさんの役(ソロ)で起用されています。
彼女たちは今回の来日公演メンバーには入っていませんが、次回の来日公演で確実に台風の目になるのではないかと思います。これからの彼女たちの活躍に目が離せませんね!

●筆者のつぶやき:イケメンの無駄遣い(笑)
今回の日本公演のメンバーからは直前で変更となってしまったスメカロフですが、本日は彼の十八番の一つであるヒラリオンとして出演していました。やはりスメカロフがいるだけで物語の重厚さと説得力が増すとつくづく感じながら、ふと思いました。スメカロフっていつも振られるか、死ぬかという役ばかりではないか。バレエ作品とはそういうものなのでしょうがないのですが、可哀そうじゃないか、あんなにイケメンなのに!ただ、やはりスメカロフのヒラリオンは唯一無二の存在なのでイケメンの無駄遣いだろうと彼にやってもらうしかないのだなと勝手に自己完結しました(笑)

【本日の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せます。

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ラ・シルフィード@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンのみなさん、こんにちは!
前回の投稿の宣言通り、遡って鑑賞日記を更新します!
本日は、今年6月にセカンドソリストに昇格した我らが永久メイさんが主役デビューを果たした「ラ・シルフィード」について取り上げたいと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、彼女の初主役デビューは今回が初めてではなく、すでに今年の4月(当時まだ研修生)にくるみ割り人形で果たしています。詳しくは以前の記事(くるみ割り人形)をご参照ください。この時は初主演だったこともあり、なぜか筆者が興奮し暑苦しい日記になりましたが、今回は何せ2回目ですからね、こちらも余裕が出てきましたよ(笑)
前置きはこの辺にしてなるべく冷静なテイストでお送りしたいと思います!

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:ラ・シルフィード
●鑑賞日:2018年10月7日
●主なキャスト:
・シルフィード:永久メイ(May Nagahisa
・ジェイムズ:フィリップ・スチョーピン(Philip stepin
・エフィー:エカテリーナ・イワンニコワ(Yekaterina Ivannikova
・マッジ:イスロム・バイムラードフ(Islom Baimuradov
・グエン:ユーリー・スメカロフ(Yuri Smekalov
●音楽:H.v.レーヴェンショルド
●振付:A.ブルノンヴィル(改訂:E-M.v. ローゼン)
●同劇場初演:1981年12月1日
●あらすじ:
第一幕:
舞台はスコットランドの農村。婚約者エフィとの結婚式を控えた青年ジェイムズの前に森の妖精シルフィードが現れ、ジェイムズはすっかり彼女の虜になってしまう。しかし、シルフィードは一瞬にして姿を消してしまう。
エフィへの気持ちを未だ諦めきれないグエンをよそに、親戚や友人たちがジェイムズの家に祝福に訪れ、愉快に踊り始める。そんな中、占い師マッジが登場し「エフィが結婚するのはグエンだ」と告げ、それを聞いたジェイムズは怒り、マッジを追い出す。
結婚式当日、再びジェイムズの前にシルフィードが現れる。彼女への気持ちを抑えきれなくなったジェイムズは彼女を追って結婚式から逃げ出す。
第二幕:
彼女を追って妖精の森に辿り着いたジェイムズ。しかし、妖精であるシルフィードには触れることができない。そんなジェイムズの想いを逆手に取ったマッジが「このショールをかけるとシルフィードを自分のものにできる」とジェイムズを騙し、彼に呪いのショールを渡す。
騙されたとも気づかずに、ジェイムズはそのショールをシルフィードのかけてしまい、彼女の背中の羽は落ち・・・息絶えるシルフィード。
そこへエフィとグエンの結婚式の列が通り過ぎる。すべてを失ったことを悟りジェイムズはその場に倒れこむ。

【感想】
●作品:
「ジゼル」と並び「バレエ・ブラン(白のバレエ)」に分類され、何と言ってもこの白のバレエの世界が最大限に発揮される二幕目がこの作品の魅力の一つでしょう。衣装のロマンチックチュチュの揺れ動く様をも計算しつくしたシルフィードと彼女を取り巻く妖精たちの舞は美しく、そして神秘的な世界を描いています。
そして、一幕目のスコットランドの庶民の生活を描いた本作は、王族・勇者等が登場するバレエ作品とは違ったどこかアットホームで温かみのある現実的な世界を連想させます。そのため、より一層シルフィードという妖精の存在に幻想実が増します。
が、しかし、実のところ、筆者はこの作品があまり好きではありませんでした(過去形)。なぜかと言うと、婚約者がいるにも関わらず誘惑するシルフィード、そしてその誘惑にいとも簡単にはまるジェイムズ。挙句、なかなか自分の手に入らないのでショールをかけて自分のものにしようとする。そうこうしている内にシルフィードが死んでしまう。身勝手にも程があるぞジェイムズ!と毎回この作品を観るたびに苛立ちを抑えきれずにいました。それなら観なきゃいいのにという突込みはご遠慮願います(笑)

しかし、今回の永久さん&スチョーピンペアを観て、完全に今までの解釈が間違っていた!ということに気づきました。永久さんの演じるシルフィードは何の下心もなく、自然に滲み出る魅力を放っていて、これは確かにいくら婚約者がいるからと言ってもジェイムズが恋に落ちるのはしょうがないと納得しました。そして、そんな彼女への切実な想いを見事に演じるスチョーピン。これはもう、ショールかけるしかないよね、とまたも納得。もはや物語の世界と現実がごっちゃになるぐらい非常に自然すぎるシルフィードとジェイムズの恋模様を演じた素晴らしい二人のダンサーのお陰で、今更ながらですが、この作品が持つ本質をやっと理解できました!笑

●ダンサー:これぞまさにシルフィード!
・永久さん:
前述の通り、これぞまさに本来のシルフィードだ!と言っても過言ではない程、前回の「くるみ割り人形」のマーシャと同様、彼女のはまり役の一つになるのではないかと感じました。冒頭の登場シーン、居眠りをするジェイムズの周りを楽しそうに舞う姿。あまりにも自然な可愛さと美しさを放ち、寝ているジェイムズよりも恐らく観客が先に恋に落ちたのではないかとさえ感じました。とりあえず、筆者はジェイムズより先に恋に落ちましたよ(笑)
魅惑的な一幕目のシルフィード、妖精の森で幻想的な雰囲気を放ちながら踊る二幕目、呪いのショールをかけられ息絶える最期。すべてを見事に演じ切り、特に二幕目はほぼ出ずっぱりの状態で多くのソロパートをこなす。繊細かつ難解な足の動きなど様々な要所を彼女の最大の武器である安定したテクニックで踊りこなす。そんな姿を目の当たりにし、前回の愛くるしいマーシャとはまた違った彼女のダンサーとしての魅力がふんだんに発揮された公演でした。
永久さんは雑誌のインタビュー等で「ジゼル」を踊ってみたいとおっしゃっているのを読んだことがありますが、今回のシルフィードはジゼルに大きく繋がる作品だったのではないでしょうか。
余談ですが、筆者はジゼルが一番好きな作品です。近い将来、永久さんのジゼルが観れることを切に願っています!

・スチョーピン:マリインスキー劇場が誇るベスト・オブ・ジェイムズの一人。ジェイムズは完全なる彼のはまり役です。理由は言わずもがな、彼はジェイムズです、完全に!笑
見た目だけの事を言っているのではありません。彼の演じるジェイムズはシルフィードへの想いが非常に一途。一途すぎるが故の暴走でシルフィードは死んでしまう訳ですが、嘆き苦しみ、悲しむ姿に見ている全観客が同情してしまう。全くもってジェイムズへの恨みなんて感じない、そんな純粋なジェイムズを見事に演じる、それがスチョーピンです!そして、コンクールなどでもお馴染みのジェイムズのヴァリエーションは、こちらも安定したテクニックが武器の彼ならでは踊りで観客を魅了しました。
そして、スチョーピンと言えば、忘れてはいけないのがパートナーシップ。彼はパートナーシップに非常に重きをおくダンサーの一人です。バレエダンサーなら当たり前の話では?と思う方も多いと思いますが、彼のモットーであるパートナーシップの大切さは、時に相手のダンサーが変わろうとも手に取るように感じることができる。これは並大抵のことではないと筆者はスチョーピンがペアを組んで踊っている際、毎回感じます。そんなスチョーピンだからこそ、永久さんの魅力がより一層引き出され、作品の魅力・重みが増したのではないでしょうか。

●本日の注目ダンサー:ユーリー・スメカロフ
本来、ここで取り上げるべきダンサーではないと思う、それぐらい名実ともにマリインスキーを代表するダンサーの一人です。
彼に関しては以前の記事(ストラヴィンスキー作品集②の余談)でも取り上げていますが、元々はエイフマンバレエ出身でその後マリインスキーに移籍し、現在はセカンドソリスト兼振付家として活躍しています。直近の作品だと「パキータ」の全幕版を復元した一人で、同演目は現地で頻繁に上演されています。12月の日本公演でも三幕目の「グラン・パ」のみではありますが演目に入っています。
さて、本題に戻りますが、この日のグエン役は元々違うダンサーの予定でしたが、当日会場でスメカロフに変更するとのアナウンスが流れました。その瞬間、元々配役されていたダンサーには申し訳ないながらも、心の中で小さくガッツポーズをしました(笑)
彼の魅力は何か、一言で言うならば、「高い演技力とそれを最大限に表現する高い身体能力」ではないでしょうか。実はグエン役はそこまで難しいパートがあるわけではないですが、とにかくこの日は彼の演技力が光りました。ジェイムズがシルフィードと逢引する様子を見た!とエフィーや友人達に必死に伝える演技を始め、舞台端での細かな寸劇など、スメカロフワールド炸裂でした。そんなスメカロフに感化されたのか周りのダンサーの演技もより一層重厚さを増し、特に一幕目はまるで演劇を観ているかのようでした。
これ以上書くと長くなるので、筆者のスメカロフ論は本日ここまでに留めます(笑)

【筆者のつぶやき】ありがとう!
永久さんのシルフィードデビューに現地で立ち会えたことに感動、そして筆者のラ・シルフィード観を大きく修正してくださった永久さん・スチョーピンペアに深く感謝します。

【本日の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せます。

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第8回ワガノワ国際バレエコンクール入賞者ガラコンサート@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンのみなさん、こんにちは!
事実上、消滅状態にあったこのブログですが、久々に更新します!更新が滞った言い訳はしません!笑
鑑賞日記が書けていない先シーズンの作品及び9月からの今シーズンに鑑賞した作品はすべてEliska’s Instagramに載せていますので、一先ずそちらをチェックしてください!
追々、遡って書いていけたらと思っていますので(たぶん…)、気長にお付き合い下さい。

前置きはこの辺にして、本日は10/15-18まで開催された第8回ワガノワ国際バレエコンクールでの入賞者ガラコンサートについて書いていきたいと思います。
なお、本公演は一時的にYoutubeで公開されていますので、お早めにどうぞ⇒第8回ワガノワ国際バレエコンクール入賞者ガラコンサート

さて、不定期に開催される本コンクールは、前回2016年に開催され日本人3人が入賞(1位1名、2位2名)する快挙を成し遂げたことでも記憶に新しいかと思いますが、ついに待ちに待ったこのコンクールが今年帰ってきました!という訳で、まずは結果から。

*印はワガノワバレエ学校の生徒
グランプリ: Mikhail Barkidjija (ロシア)*
男子(ジュニア部門)
1位:Mikhail Barkidjija*
2位:Junsu Lee (韓国)
3位:Yan Begishev (ロシア)*

女子(ジュニア部門)
1位:Seyeon Min(韓国)
2位:Yulia Bondareva (ロシア)*
3位:Lizi Avsadjanishvilli (グルジア)*

男子(シニア部門)
1位:Marko Juusela (フィンランド)*
2位:Danila Khamzin (ロシア)
3位:Alexei Khamzin (ロシア)

女子(シニア部門)
1位:Anastasia Smirnova (ロシア)*⇒前大会D.ヴィシニョーワ賞受賞、Alexandra Khiteeva (ロシア)*
2位:Aviva-Gelfer Mundl (アメリカ)*
3位:Anastasia Gorbacheva (ロシア)*

N.ドゥジンスカヤ・K.セルゲーエフ賞:Seyeon Min
グリシコ賞:Maria Malinina(ロシア)
観客賞:Aaron Osawa-Horowitz(アメリカ)*、Yulia Bondareva*

結論としては、やはりワガノワ強し!
そして、前回大会同様、安定の強さ、韓国国立総合芸術学校!
そんな中、よく頑張ったペルミバレエ学校!(韓国の2名以外の*印のないロシア人3名)
このコンクールの選考方法は、一次のクラスレッスンの様子で本選への通過者を選抜するのですが、当たり前ながらこのレッスンは最高難易度のバレエ教授法「ワガノワメソッド」で行われる訳で・・・(これ以上は察してください 笑)
日本からはシニア部門の男女3名(Taisei Jomen、Saaya Kato*、Kazane Takaki*)が本選に進んだようです。惜しくも入賞は逃してしまいましたが、今後の3名の活躍に期待しましょう!
今回は日本人の受賞者がいないのか、と肩を落としているそこの貴方、お気づきでしょうか?観客賞を受賞したAaron Osawa-Horowitzはアメリカ出身ですが日本のバックグラウンドを持っています。なので、みんなで盛大に喜びましょう!

さて、肝心のガラコンサートですが、以下のようなプログラムでした。
【公演情報】
●公演:第8回ワガノワ国際バレエコンクール入賞者ガラコンサート
●鑑賞日:2018年10月20日
●プログラム:
【第一幕】以下、出演順に(作品名、出演者名)
1.「Saia Lusa」、Joana Senra(ポルトガル)⇒彼女は賞は受賞していませんが、ワガノワバレエ学校での研修生の資格を手にしました。
2.「ライモンダ」1幕よりライモンダのVa、Lizi Avsadjanishvilli
3.「ラ・シルフィード」1幕よりジェイムズのVa、Yan Begishev
4.「海賊」よりメドーラのVa、Anastasia Gorbacheva
5.「エスメラルダ」よりアクティオンのVa、Aaron Osawa-Horowitz
6.「パキータ」よりパキータのVa、Yulia Bondareva
7.「ライモンダ」よりジャン・ド・ブリエンのVa、Danila Khamzin
8.「エスメラルダ」よりダイアナのVa、Aviva-Gelfer Mundl
9.「眠れる森の美女」3幕よりパ・ド・ドゥ、Seyeon Min, Junsu Lee
10.「ラ・バヤデール」よりガムザッテイのVa、Anastasia Smirnova
11.「くるみ割り人形」より王子のVa、Marko Juusela
12.「フローラの目覚め」よりフローラのVa、Alexandra Khiteeva
13.「白鳥の湖」よりジークフリート王子のVa、Mikhail Barkidjija

軽く感想を書きますと・・・
前回大会でD.ヴィシニョーワ賞を受賞したAnastasia Smirnova、そして今年の卒業公演(卒業学年ではありませんが)でも大活躍したAlexandra Khiteevaはテクニカルな部分はもちろん表現力ともにもはや異次元でした。この二人を始めシニア部門の生徒はやはり舞台慣れしているのか伸び伸びと踊っている印象を受けました。場慣れしていると言えば、韓国の2人(Seyeon Min, Junsu Lee)。前回大会の韓国からの入賞者と同じ学校出身なだけあり、全身からみなぎるパワー、そして何よりも韓国勢の勢いを感じました。ちなみに、お気づきの人もいるかと思いますが、Junsu Leeは今年のローザンヌ国際バレエコンクールで4位入賞とコンテンポラリーダンス賞を受賞しています。
そして、ローザンヌと言えばもう一人。踊りの雰囲気が少し変わっていたので最初気づきませんでしたが、アメリカ出身のAviva-Gelfer Mundlも今年のローザンヌでスカラーシップ賞を取り、現在はワガノワに在籍しています。

【第二幕】白の組曲
キャスト:ワガノワ卒のマリインスキー在籍ダンサー(Maria khorevaMaria bulanova、Anastasia Nuikina、Anastasia Demidova、Biborka Lendvai)、ワガノワバレエ学校生徒

先日の「パキータ」で主役デビューを果たした期待の新人Maria khorevaを始め、前回大会ジュニア部門1位のMaria bulanova、左記2人と同じくソリストとしての起用が多いAnastasia Nuikina等が参加するという何とも豪華な「白の組曲」!
この作品は6月のワガノワの卒業公演でも上演したのですが、今回も信じられないぐらい美しく、そして素晴らしかったです!
この作品の何がすごいかと言うと、プロのバレエ団でもプリンシパル級のそうそうたるキャストで構成される作品で、難易度が非常に高いことでも有名です。それをバレエ学校の生徒だけ(今回はプロもますが、6月の卒業公演までは彼女たちも学生でした)でやりきるというとんでもないレベルの高さ!まさに今のワガノワバレエ学校の真骨頂とも言えるべき代表作ではないでしょうか。
そして、何よりも1幕目で緊張の面持ちだった入賞者たちが生き生きと踊っている姿がとても眩しかったです。特にPas de trois(Youtubeだと1:39:47辺り)を踊ったLizi Avsadjanishvilliはとても堂々としていて別人のようでした。別人と言えば、Mazurka(1:53:41辺り)を踊ったMikhail Barkidjija、彼がグランプリを取った所以がこの作品に詰まってます!実は、6月の卒業公演でも同じパートを彼が踊っていたのを観たのですが、今回はその時よりもさらにレベルアップしていて、特徴的なマズルカのリズムとメリハリの利いた難解な振り付けを見事にこなし、地鳴りのような大喝采を浴びていました。グランプリ受賞者は伝説のバレリーナ G.ウラーノワをモチーフにしたトロフィーを授与されるのですが、授賞式の際にツィスカリーゼ校長が「君にあげるのはいまいち気に食わないけど」と裏腹なコメントをしていましたが、そんなユーモアたっぷりなことを言っちゃうぐらいですから正直ツィスカリーゼ氏も教え子のグランプリ受賞が嬉しかったのだと思います。
ちなみに、日本人の学生もPresto(1:47:19辺り)の男子4人の内の一人にNada Itaruくん、名前が分からずすみませんが、筆者の視力が正しければ女子のコールドに日本人の女の子を見かけました。

●筆者のつぶやき:
今回何が嬉しかったかと言うと、「白の組曲」をまた観れたことと、何といっても生イリーナ・コルパコワを見れたことでしょ!笑

【本日の写真】
題名「美しきかな師弟愛」⇒L.コワリョーワと教え子M.ホーレワの素敵な抱擁シーン(写真中央)
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ライモンダ@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンのみなさん、こんにちは!
本日、4月29日は国際ダンスデ―です。
そんな日にぴったりな投稿を!ということで、先日鑑賞したマリインスキーバレエ団の「ライモンダ」を取り上げたいと思います。
今年、生誕200周年を迎えたロシアバレエの父「マリウス・プティパ」の晩年の作品であり、主役のバレリーナ泣かせとも言える5種類ものヴァリエーション(ソロ)をちりばめた非常に難易度の高いこの作品。まさにプティパ渾身の一作と言えるでしょう!

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:ライモンダ
●鑑賞日:2018年4月25日
●主なキャスト:
・ライモンダ:ヴィクトリア・テリョーシキナ(Viktoria Tereshkina
・ジャン・ド・ブリエンヌ(婚約者):サンダー・パリッシュ(Xander Parish
・アブデラフマン:コンスタンチン・ズヴェレフ(Konstantin Zverev
・クレメンス(ライモンダの友人):クリスティーナ・シャプラン(Kristina Shapran
・ヘンリエッタ(ライモンダの友人):ナデージダ・バトーエワ(Nadezhda Batoeva
●音楽:アレクサンドル・グラズノフ
●振付:マリウス・プティパ(コンスタンチン・セルゲーエフ改定版)
●同劇場初演:1898年1月7日
●あらすじ:
第一幕:
舞台は中世フランス。お城ではライモンダの誕生日パーティーが開かれている。彼女は十字軍出征に旅立ったハンガリー国王の息子で婚約者のジャン・ド・ブリエンヌの無事の帰還を祈り続けていた。そんな彼女のもとに招かれざる客であるサラセンの騎士アブデラフマンが現れ、彼はたちまちライモンダに心奪われる。アブデラフマンは彼女に気に入られようと高価な贈り物を差し出すが、彼女は全く関心を示さない。
その夜、ライモンダは眠りにつき、夢の中に婚約者のジャンが現れた。彼女は婚約者との幸せなひと時を過ごすが、いつしかジャンの姿はアブデラフマンとすり替わってしまう。慌てて飛び起きたライモンダは夢だったと悟る。
第二幕:
十字軍の遠征に勝利した知らせを受けて、お城ではジャンの帰還を祝う宴が始まった。ただ、ジャンはまだ姿を現さず、今か今かと待つライモンダのもとに再びアブデラフマンが現れ、ライモンダを略奪しようと試みる。しかし、ついにジャンが姿を現し、ライモンダをかけてアブデラフマンとの決闘が始まる。結果、アブデラフマンが破れ、息絶える。
第三幕:
ライモンダとジャンの結婚式。

【感想】
●作品:
導入にも書いた通り、主役のライモンダの5種類ものヴァリエーションからなる珍しいバレエ作品、とにかく見応え満点でした。そして、サラセンやハンガリーの民族舞踊などの要素がふんだんにちりばめられ、異国情緒を感じる魅力的な作品でした。また何よりもプティパの「眠れる森の美女」と同様にとにかく絢爛豪華で、壮大な作品の世界観にどんどん引き込まれ、あっという間の3時間でした。

●見所シーン: 
その①:
ライモンダの5種のヴァリエーション。一幕目の薔薇をモチーフにしたヴァリエーション、夢の中での2種のヴァリエーション、二幕目の恐らく誰もが聞いたことのあるメロディーでホルンの音色が特徴的なもの、三幕目の結婚式のシーン。すべてが非常に難易度の高いヴァリエーションであり、かつ特徴の異なった振付で、ライモンダ役のバレリーナの様々な魅力を感じ取れる構成になっています。主役のダンサー的には計り知れない苦労があり、たまったものではないでしょうけど(笑) しかし、確実に全てのヴァリエーションが見所で、見逃すことはできません。
その②:第二幕。サラセン人達(アブデラフマンの手下)、そして、アブデラフマンの躍動的で情熱的な舞。ライモンダへの必死の求愛、ほんの少し心が揺れそうなライモンダとの絶妙な掛け合いは必見です。
その➂:第三幕。結婚式でのハンガリー舞踊。特徴的な首、手、足の動きなど、この作品の特徴を感じられる場面になっています。

●ダンサー:完璧に踊りこなすライモンダ
・テリョーシキ:ミス・パーフェクトとも言われる彼女、筆者が勝手に言っているだけですが(笑) それにしてもやはり彼女の正確さ、一寸とも狂わない高いテクニック、豊かな音楽性をこれでもか!と見せつけられ、まさに彼女の魅力を余すことなく感じられるパーフェクト・ライモンダでした!
テリョーシキナにはどうしても「パーフェクト」という言葉を使いたくなりますが、実際この言葉が一番似合うダンサーだと思います。
・パリッシュ:彼を見るといつも切実に痛感します。やはりダンサーは見た目が大事なのだと(笑) 信じられない程、絵に描いた通りのジャンがそこにはあり、ジャンそのものでした。あまりにも「勇者」という表現が似合う、そんな強烈なオーラを放っていました。
・ズヴェレフ:皆さんも薄々お気づきかとは思いますが、ズヴェレフ信者の筆者。詳しくは以前の記事(愛の伝説)をご参照ください。この日も魅力満載のアブデラフマンを踊り切り、二幕目で死してしまうのはわかっていながらも、なぜか彼を応援してしまうというストーリー完全無視の見方に走った筆者ですが(笑) 彼はソロでの踊りの魅力もさることながら、サラセン人の手下を率いた中での、つまり群舞での圧倒的な存在感のある舞やテリョーシキナとの絶妙な掛け合い、安定感のあるサポート、リフト、男性ダンサーに必要な全てを兼ね備えた非常に器用なダンサーだと毎回観る度に感じます。

●本日の注目ダンサー:ナデージダ・バトーエワ
ここでわざわざ注目しなくても、来日公演でも度々彼女を目にしている方も多いかと思うので皆さんご存知かとは思いますが。近頃は「白鳥の湖」で主役デビューを果たすなど着々とプリマへの道を進んでいる模様の彼女。今秋の日本公演でも彼女が「白鳥」にキャスティングされていましたね。
この日はライモンダの友人(ヘンリエッタ)を華麗に踊り、一幕目ではペアを組む相手役のフィリップ・スチョーピンとの絶妙に息のあったパートナーシップを披露しました。そして、二幕目の彼女のヴァリエーションでの息を呑むほどの完成度。とあるロシアのバレエ評論家が「ポスト・テリョーシキナ」と言っていたのをふと思い出し、今後のマリインスキーを確実にリードしていくダンサーであることをひしひしと感じました。
ちなみに、彼女のご主人はアントン・ピモノフという元マリインスキー劇場のダンサーで現在は振付家として活躍中です。舞台関係者を対象としたゴールデンマスク賞(振付家部門)を昨年受賞し、今シーズンからエカテリンブルクバレエ団の副芸術監督にも就任し、活躍の場を広げています。妻もすごいが夫もすごいという恐るべき夫婦!今後のお二人の一層の活躍に目が離せません。

●筆者のつぶやき:ホルンが・・・
二幕目のメロディーが特徴的なライモンダのヴァリエーションで、ホルンソロがやらかすという・・・。にも関わらず、何事もなかったかのように踊り切るテリョーシキナ。もはやブラボーを通り越して、何と言って彼女を称えたらいいか分からないぐらい!
そりゃ、人間上手くいかない時もありますよね、ただ、あのホルンソロのミスは致命的では・・・笑
どんなメロディーかというと出だしの「パッパッパララ~♪」というところですけども、よくわからない方はロパートキナ版の動画(7:09辺り)でご確認ください。

【本日の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せます。

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ロミオとジュリエット 公演動画公開中@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンの皆さん、こんにちは!
前回の愛の伝説に続き、マリインスキー劇場の公式Youtubeサイトにて昨日4/20に上演された「ロミオとジュリエット」の動画が公開されています。
恐らく1~2週間ぐらいで削除される可能性がありますので、お早めにどうぞ⇒ロミオとジュリエット(2018年4月20日公演)

この公演は前回の愛の伝説と同様に1幕毎に主役が変更するという変則的なキャスト構成になっている特別公演です。というのも、元マリインスキー劇場のダンサーで現在は同劇場でバレエマスターとして後身の指導にあたり、ファルフ・ルジマトフ(Farukh Ruzimatov)をはじめとしたロシアバレエ史、いや、世界バレエ史に名を馳せる多くのダンサーを育て上げたゲンナージー・セリュツキー(Gennady Selyutsky)の80歳を記念した公演だからです。配役はセリュツキー自身が行い、主要男性キャストは全て彼の教え子です。

主なキャストは以下の通りです。
【ロミオ】
1幕目:エフゲニー・イワンチェンコ(Yevgeny Ivanchenko
2幕目:アンドレイ・エルマコフ(Andrei Yermakov
3幕目:イーゴリ・コルプ(Igor Kolb)

【ジュリエット】
1幕目:ヴィクトリア・テリョーシキナ(Viktoria Tereshkina
2幕目:アナスタシア・マトヴィエンコ(Anastasia Matvienko 
3幕目:オレシア・ノヴィコワ(Olesya Novikova

【ティバルト】
1幕目:ドミトリー・ピハチョフ(Dmitry Pykhachov
2幕目:ダニーラ・コルスンツェフ(Danila Korsuntsev

【マキューシオ】
1幕目:アレクセイ・ティモフェーエフ(Alexei Timoveyev
2幕目:アレクサンドル・セルゲーエフ(Alexander Sergeev

その他同作品の情報は劇場公式サイトをご参照ください。

このキャスティングを見た時、久々に大きな声が出ました(笑)
もちろん各ダンサーの個性を活かした配役になっているのですが、何と言っても3幕目のロミオにコルプがキャスティングされている事に!
皆さんもご存知の通り、彼はマリインスキーバレエ団を代表するプリンシパルダンサーの一人で、今まで数々の主役を踊ってきました。しかしながら、近年のコルプは王子路線から離れ、悪役やキャラクター性の強い役を踊ることが多くなりました。これがまさかのハマリ役で、かつて王子を演じていた人とは思えないほど、すっかりこの路線のイメージが浸透しています。
が、やっぱりたまには彼の王子役も観てみたい!と思っていた矢先。直球ど真ん中ストライクなロミオ役に久々に配役され、筆者的にはこの日の公演を非常に心待ちにしていました。
このような素敵なキャスティングを考えてくださったセリュツキー氏に心から感謝します(笑)
きっと彼も久々にコルプのロミオが観たかったのでしょう。

もちろん、コルプだけでなく全幕通して各ダンサーの一味違ったロミオ、ジュリエット、ティバルト、マキューシオが味わえます!
どうぞ存分にセリュツキーワールドをお楽しみください!

くるみ割り人形@マリインスキー劇場

ロシアバレエファンのみなさん、一大事です!
なんと、我らが日本人ダンサー・永久メイさんが「くるみ割り人形」でマーシャ役デビューを果たしました!
この歴史的快挙を観ずしてどうする!ということで、全ての予定を投げ出し、観に行ってきました!
未だ興奮冷めやらぬ状態で、いつも以上に暑苦しい鑑賞日記になりそうですが、どうぞ最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
まさかとは思いますが・・・(笑) 万が一、永久さんをご存知ない方は前の記事の注目ダンサーの項目をご参照下さい。

【鑑賞作品情報】 ※劇場英語版サイトからも情報をご覧いただけます。
●作品:くるみ割り人形
●鑑賞日:2018年4月10日
●主なキャスト:
・マーシャ:永久メイ(May Nagahisa
・王子:ヴィクトール・カイシェタ(Victor Caixeta
※ロシアで上演されている「くるみ割り人形」は主人公の名前が「クララ」ではなく、「マーシャ」となります。
●原作:E.T.A.ホフマン
●音楽:ピョートル・チャイコフスキー
●振付:ワシリー・ワイノーネン(台本:マリウス・プティパ)
●同劇場初演:1934年2月18日
●あらすじ:
第一幕:
ドイツのとある古い街でのクリスマス・イブ。シュタールバウム家では盛大なパーティーが催されている。マーシャはドロッセルマイヤーおじさんからもらったくるみ割り人形をいたく気に入り、楽し気に遊んでいると弟のフランツがちょっかいを出し、人形を壊してしまう。ドロッセルマイヤーおじさんが何とか修理してくれて一安心。
夜もふけり客も帰宅の途に就く。人形を大事そうに抱え、マーシャ就寝。
第二幕:
マーシャの夢の中。ネズミの王様を引き連れたネズミの集団にマーシャが取り囲まれてしまう。それを助けるべく、くるみ割り人形を筆頭に兵隊たちがネズミとの対決を繰り広げる。くるみ割り人形はネズミの王様との一騎打ちで劣勢を強いられるが、マーシャが王様にスリッパを投げつけ撃退し、ネズミの集団は退散する。
ドロッセルマイヤーが再び登場し、マーシャをお姫様に、くるみ割り人形を王子様に変身させ、雪の精に誘われおとぎの国へいざなわれる。
第三幕:
おとぎの国では到着した二人を出迎える宴が開かれ、二人も共に踊り、楽しいひと時を過ごす。
エピローグ:
魔法のような夢は終わりをつげ、目を覚ますマーシャ。

【感想】
●作品:何度見ても本当に良いですね、この作品は。まさかの薄っぺらい感想(笑)
ではなく、本当に心の底からため息が出る程、言葉を失う程のこの作品の力(観て楽しい・聞いて楽しい)に感無量です。クリスマス感ゼロの4月にも関わらず、時季を問わずクリスマスと錯覚してしまう、この作品の世界観の深さに改めて圧倒されました。
ちなみに、同劇場で上演されているワイノーネン版の「くるみ割り人形」は全幕を通してマーシャ役は大人のバレリーナが踊ります。イワーノフ版及び一部のワイノーネン版ではマーシャは子役(バレエ学校の生徒)が、お姫様になったマーシャ(いわゆる金平糖の精)を大人のバレリーナが踊ります。
何はともあれ、同劇場のケースでは終始、永久さんが観れるということです!

●見所シーン: 
その①:
第一幕。ドロッセルマイヤーが仕掛ける遊び心満載の展開。チャイコフスキーの巧みな音色と調和してクリスマスパーティーの楽し気な雰囲気が存分に感じられます。そして、おじいさん・おばあさんのダンスシーン、細かな小芝居も見逃せません。
その②:第二幕。雪の精の舞と、それを盛り上げる合唱隊。主役の二人だけでなく、観客をも巻き込んでおとぎの世界へいざないます。雪の精のステップを真似する愛らしいマーシャの姿も見逃せません。
その➂:第三幕。各国の踊り、薔薇の精、マーシャ・王子のパ・ド・ドゥ、要するに全てです(笑) 特に、パ・ド・ドゥでは薔薇の精の男性ダンサー4名も加わった壮大なリフトが繰り広げられ、圧巻です。

●ダンサー:愛すべきマーシャ!
・永久さん:実は観劇の前日、なぜか筆者が踊る訳でもないのに、あまりにも興奮して良く眠れず。おまけに、当日開演したらしたで、急に緊張し手に汗をかき出すという落ち着かない筆者をよそに(笑) 信じられない程に穏やかで、かついつものチャーミングさ、そしていつも通り落ち着いた正確なテクニックを見事に披露する永久さんの姿を目の当たりにし、楽しいパーティーの場面にも関わらず、涙する筆者(笑) しょうがないんです、歴史的快挙なんですもの、日本人があの天下のマリインスキー劇場で、ロシア最高峰、いや世界最高峰のバレエ団で主役を踊っている訳ですから。
それにしても本当に彼女は素晴らしいダンサーだということを実感しました。とにかく、全てのパが美しい、そして信じられない程の正確さ。この日は特に彼女の持ち味が際立っていたと思います。そして、持ち前のチャーミングさがまさにマーシャ役にぴったりで、本場ロシアの観客も魅了し、愛されるマーシャになったのではないでしょうか。
・カイシェタ:彼も永久さんと同じく今シーズンから研修生としてマリインスキーに所属しているブラジル出身のダンサー。ルジマトフ、ゼレンスキーなどを育てた巨匠ゲンナージー・セリュツキーに師事し、近頃は永久さんと同じく重要な役にキャスティングされている将来有望なダンサーの一人です。
が、しかし、永久さんへの想いが強すぎて申し訳ないことに彼のキャスティングは若干そっちのけ気味になっていて・・・本当に心から謝罪します(笑)
ところが、第二幕、王子の登場シーン。度肝を抜かれました!なんだ、この全身のしなやかさ、ラインの美しさ、指先から足先までの細やかな表現力。まさにロシアンスタイル!と見入り、そして彼の世界に完全に引き込まれました。
そして、何よりも主役二人のパートナーシップが光りました。日頃からの仲の良さも要因の一つだとは思いますが、この日のためにたくさんの練習を重ねた努力の結晶を感じました。

●本日の注目ダンサー:ラウラ・フェルナンデス(Laura Fernandez
彼女の写真を見て、あれ?とお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、2016年のローザンヌ国際バレエコンクールの最優秀コンテンポラリーダンス賞とベストスイス賞に輝いたワガノワバレエ学校出身のスイス人ダンサーです。
この日はあし笛の踊り(フランスの踊り)にキャスティングされていました。永久さんと同様、全身からにじみ出るチャーミングさ、そして身体のしなやかさとポジションの美しさがあし笛の踊りとマッチし、彼女の長所が非常に際立っていました。
彼女も今回の主役の二人と同様、重要なソロでの起用が増えてきているダンサーの一人です。これからの活躍に大注目です!

●筆者のつぶやき:もう研修生じゃなくていいんじゃないの?笑
今回の主役の二人、もう本採用にしましょうよ。研修生レベルをはるかに超えた完成度でしたよ。若い二人のダンサーに注がれた拍手喝采が何よりもそれを証明していると思います。
二人の今後の活躍にこれからも目が離せません!

【本日の写真】カーテンコール
※この他の写真はEliska’s Instagramに載せます。

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